【対象をよく知るとは、能く識ること】

2022.01.11

 

「対象をよく知る」 というテーマについて弊社の考え方を示し、それをデータ分析にどう活かすかをご紹介したく思います。

昨今、「データドリブン経営」 というキーワードがよく見聞きされます。

「事実にもとづいて、経営に関する意思決定を行う」 という意味で使われていると思います。事実をもう少し具体的に言うなら、主体 「~が」、状態 「・・・である」 と言い換えることができるでしょう。

この把握方法は何ら変哲もないことですが、対象に目的あるいは目標概念を含める場合、主体 「~が」、状態 「・・・である」の把握だけでは不十分と考えられます。なぜなら、主体と状態の関係がより良く成ることを期待しての現状把握なので、決定的に不足している要素があります。

皆さまは何だと思われますか?

 

それは、「 _ の基」 を表す前提です。

ここまで読まれて気付いた方もいると思いますが、目的あるいは目標概念を含む「対象をよく知る」 とは、「対象」-「状態」―「前提」の3つの要素を三位一体として認識することと、弊社では定義しています。図で表せば下記のようになります。

 

 図  対象の三位一体認識

次に、三位一体による対象認識をどう意思決定に活かすかについて示します。 『所変われば品変わる』 ということわざがありますが、結論から先に言うと、まさにこの一言に尽きます、「所」を前提、「品」を「対象の状態、すなわち事実」 と置き換えれば、そのまま当てはまります。

『所変われば品変わる』 をデータ分析に活かすとすれば、それは 「前提」 を基準にして、全体集合であるデータセットを分け、能動的に対象の状態を比較して観るということに他なりません。つまり、「対象の状態(事実) が違うのは、前提が違うから」 という認識のもと、より良く成るデータセットの方へシフトすればよいという発想です。

では、どんなデータセットへシフトすればよいのでしょうか?

皆さまの関心もここにあると思いますが、それはそう簡単なことではありません。前提を構成する条件をリストアップするにしても、非常にたくさんの要素が考えられるからです。

ただ、最初に考慮すべき要素が多くても、そこから有力な要因を絞り込むための発想は非常にシンプルなので、上記前提条件の解明に役立つと思います。その発想法をご紹介します。

 

 【表裏観照】

突然何のことだろうと、不思議に思われる方も少なくないと思います。

私どもの造語なので仕方ないのですが、「前提と照らし合わせて(前提を基準にして)、表と裏、2つの姿を対比して観る」という、比較対照の大切さに想いを込めた造語です。

そして、この発送法をアンケートデータ分析に適用したのが、下記のイメージ図です。

 

図  表裏観照のイメージ

「前提と照らして(前提を基準にして)」 という部分がポイントです

冒頭で示したように、人は事実を把える際、どうしても前提条件を失念してしまいがちだからです。その場合、目に見える集計結果(事実)をどう解釈するかというと、無意識のうちに、自分が慣れ親しんだ主観的な立場と関連づけて解釈しがちです。上記イメージ図で言えば、表の姿における 「対象選択率」 が高ければ大切と判断しがちです。

しかし、この判断は正しいでしょうか?
もし、裏の姿における 対象選択率が表の姿と同じ(ケースBの場合)、あるいはもっと高かったとしたら(ケースCの場合)どうでしょうか?

そう、目に見えやすい表の姿だけを見て取捨選択すべき前提条件を判断すること(弊社では「表象バイアス」とよ呼んでいます)は、とてもリスクが高いことを想像できると思います。

『本当に大切なものは目に見えない』 (星の王子さま、キツネの言葉)、『目前心後』 (世阿弥)の格言が示すように、目の前に見える姿の把握だけでは、本当に大切な前提条件は得られないのです。

本当に大切な前提条件は、目と心の眼、2つの目を活用して表の姿とその背後に潜む裏の姿を動的に別&対比することを通して、ハッキリ見えてくることを示唆しています。

そして、それを実現するには、「基準」 を強烈に意識することがポイントであると、私どもは考えます。(弊社は 「Datum」 という名称ですが、Datumには 「基準」 という意味があります。会社のロゴにも、上記の想いを込めました)。さらに、主観を排除して客観的にものごとを判断するのに役立つのが統計学における検定であり、この手法をさまざまなアンケート分析に活用しています。

最後に、この原稿で最もお伝えしたかった「意味のある視点の見つけ方」のイメージを図にしてみました。微力ではありますが、この発想法が皆様の意思決定に役立ったのであれば幸いです。関連する分析事例(共起性ランキング分析 記事はこちら)を弊社ホームページに投稿しています。宜しければ併せてご参照ください。ありがとうございます。

微力ではありますが、本稿で紹介した発想法が皆さまの意思決定に役立ったのであれば幸いです。関連する分析事例を当ホームページに投稿しています。宜しければ、「共起性ランキング分析」 等の事例も併せてご参照ください。