問題解決に必要な4つの技術

2021.09.03

 

~分解術、組合せ術、因果関連術、評価術~

ステップ1:分解術 ~違いに気づくための技術~

問題とは「あるべき姿」と「現在の姿」の<ギャップ>、あるいは「習慣的な日常状態」と、その「日常状態から逸脱した状態」との<ギャップ>である。

最後にこれらの<ギャップ>を踏まえて判断を行うにしても、まずはこの<ギャップ>=「違い」が明確に認識されなければいけない。簡単に言えば、「違いへの気づき」がすべての出発点なのである。

では、このギャップに気づくためのポイントとは何だろうか? 具体的には、

  • 全体視点と部分視点、両方の視点から多角的に現象をとらえる。
  • 比較する対象を設定する。
  • 現象をプロセスの流れの中でとらえる。

 

という3つのポイントが指摘できるだろう。これ関する事例をもとに検討してみたい。その際、取りあげる事例に共通しているある重要なことがある。

それは、現象として表面化している結果データを「分解」して、ひとつのデータを多角的に捉えようという姿勢である。この「分解術」こそ、気づくための重要な技と言えよう。

 

事例1:フィットネスクラブの問題解決策と全体像の把握について
~あるフィットネスクラブが抱える本当の問題をつかむ方法とは~

分析術:分解術

テーマ:①どこに問題があるのか? 問題所在のポイントをつかむ。②問題の所在がわかったとして、どうすればよいのか? 解決策の合理的、かつ具体的な方針を定める。

主な分析手法:ロジックツリー分析

  • 問題提起:都内にある某会員制フィットネスクラブは、開業以来10年ほどの年月が経つが、当初予定の会員数になかなか到達できないでいる。広告や販売促進策も行ってはいるが、本当に効果があるのかどうか? あるいは、広告宣伝よりもサービス自体に問題があるのだろうか?

 

フィットネスクラブの問題点を探るには?

ここでは、真の問題がどこにあるのか、皆目検討がつかない状態にあるフィットネスクラブのとるべき解決策を事例として検討したい

読者の皆さんが、上記のような状態にあるフィットネスクラブの問題解決策を依頼された場合、どのように着手するであろうか?

このフィットネスクラブの場合、今わかっている事実は次のとおりである。

  1. 開業以来10年ほど経つ。
  2. 広告や販売促進策を、それなりに行っている。
  3. 当初予定の会員数になかなか到達できない。

このようなわかっている事実(現状)をもとに、ある目標とする到達点までの道筋を合理的かつモレや重複がないように結びつける有効な分析手法がある。それが「ロジックツリー分析」と呼ばれる手法なのだ。私も、調査企画プロジェクトを立ち上げ、そのゴールを見定める際にはよく使う手法であり、とても重宝している。

 

ところで、皆さんは「前始末」という言葉を聞かれたことがあるだろうか? この言葉は、イトーヨーカ堂の創業者で、名誉会長の伊藤雅俊氏の言葉である。一般的に、後始末という言葉はよく耳にすると思うが、ビジネスでは「後」ではなく「前」が圧倒的に大事であると、伊藤氏は説かれている。ビジネスでは「最初のゴール設定=結論ありき」なのだ。

私は、氏の言葉を「結論から逆算して、今は何をすべきか、そして次の段階では何をという方法で、行動指針を決めることが第一である」と解釈した。

そして、この前始末の考え方を具体的に体系立てたものが、「ロジックツリー分析法」であるとも考えている。

「ロジックツリー分析法」とは何か?

「ロジックツリー分析法」はどのような特徴を持っているのだろうか?

冒頭に示した会員制フィットネスクラブの場合、次のようなロジックツリー分析を

提示し、問題の所在を明らかにする道筋、その具体的な解決策の指針を明らかに

した(【事例図1-1】参照)。考え方のプロセスを説明すると

  1. 最上部には、目標とすべき課題を設定する。
  2. 第2層目には、その目標とすべき課題を解決するために重要と考えられる要因を列挙する。
  3. 第3層目には、第2層目に掲げた要因を解決するために重要と考えられる要因を具体的に列挙する。

となる。

このように、順次、上位階層で抽象度の高い要因を、下位階層で具体的な要因に展開していくところに、この分析の特徴や醍醐味がある。

そのため、展開していく階層の数を増やすことで、抽象的なものから、より具体的な内容へ展開できるし、それと同時に課題解決へ向けた方策の選択肢の幅も広がる。

このように、展開の回数を増やすごとに、木々のように中心の幹から末節の枝葉に向かって進む姿に似ていることから、ロジックツリー分析と言われている。

堂々巡りしてしまいそうな思考を、すっきりと展開させたい時にはとても使える手法なので、大いに活用して欲しい。

ロジックツリー分析を運用するとき、注意するべきふたつのポイント

ロジックツリー分析を運用ときに、注意すべきふたつのポイントを説明しよう。

  1. 同じ階層に掲げる要因は、できるだけ同じレベルの内容にする。
    これは同じ階層の要因は、抽象度が同じレベルで統一するということである。この抽象度のレベルがあまり極端に離れていると何か違和感があるし、対策相互の関係を検討する際にも扱いにくくなる。
  2.  取りあげる要因に「モレ」「重複」がないか。
    ロジックツリー分析を行うと、課題解決へ向けての具体的な要因が挙げられる。その際に「モレ」「重複」がないか、注意する必要がある。せっかく思考展開しても、考慮すべき要因にモレや重複があると、結論に対する信憑性に疑問が生じるきらいが生じるからだ。これを解決するには、マーケティングではよく用いられる手法であるが、4Pや3Cといった、常套的な視点をあらかじめ組み入れておくのも有効だ。

ちなみに、冒頭に示した会員制フィットネスクラブの場合、次のようなロジックツリー分析を提示し、問題の所在を明らかにする道筋、その具体的な解決策の指針を明らかにした。(【事例図1-1】参照)

  • 【4P】・・・・・・Price(価格)、Product(商品)、Promotion(広告)、Place(流通チャンネル)
  • 【3P】・・・・・・Customer(顧客)、Competitor(競合相手)、Company(自社)

 

事例の第1番目としてロジックツリー分析の例を示した理由は、一見ものすごく大きく、高く立ちはだかる壁のように見える問題でも、分解し、より具体的で小さな課題に切り分けることで、解決の糸口を見つけやすくできるという「分解術」の重要性を強調したいためである。

【事例図1-1】 会員制フィットネスクラブのロジックツリー分析