第2回:研修の成果は、数字の差だけで分かるのか?
「純効果度」から考える比較の前提:インタビューを受けて

2026.10.20

 

研修を受けた人の目標達成率が高かった。その数字を見て、研修に効果があったと判断する前に、確かめたいことがある。株式会社データムの舘野真一社長は、受講の有無以外にも、成果に関わる条件があると指摘する。インタビューで示された仮の営業研修の例と、独自指標「純効果度」の考え方を通じて、データを施策の判断へ使う際の前提を考える。

七割と四割の差をどう読むか

研修を受けた人の目標達成率が70%、受けなかった人では40%だったとする。差は30ポイントだ。この二つの割合を並べれば、研修を受けたグループの方が高いという事実は読み取れる。舘野社長は、このような達成率の差を「名目効果」と呼んで説明した。

では、30ポイントすべてを研修による効果と考えてよいのか。ここがインタビューの中心的な問いだった。示された70%と40%は、仕組みを説明するために置いた仮の数値であり、特定の企業で実施した研修の実績を表すものではない。計算で差を出すことと、その差が生じた理由を説明することを分けて読む必要がある。

割合だけでなく、それぞれ何人を調べた結果なのかも確認したい。70%と40%という二つの数字だけでは、四つの区分に入る人数や、全体に占める各集団の割合は分からない。純効果度の算式を実際に使うには、元になるクロス集計の件数が必要であり、仮の達成率だけから計算結果を補うことはできない。

 

受講の有無以外の条件を見落とさない

営業の目標達成には、研修以外の条件も関係し得る。例えば、もともとの営業経験、上司の支援、研修前から抱えていた案件の量などだ。意欲の高い人や、営業経験の長い人が受講者側に多く集まっていれば、達成率の違いに、その背景が表れている可能性もある。

舘野社長は、厳密に比較するなら、受講した人としなかった人の背景をそろえる必要があると話した。一方、現場で後から集めるアンケートは、実験のように条件を割り付けたデータとは限らない。単に二つのグループを作っただけでは、公平に比較できる条件が整っているとは言い切れないのである。

この問いは、広告を見た人と見ていない人、あるサービスを使った人と使っていない人を比べる場面にも当てはまる。結果の違いが見えたときに、集団の背景やデータの集め方まで確かめることが、判断を支える基本になる。

実務への当てはめとしては、達成とみなす基準や集計の期間を共有し、受講者がどのように選ばれたかも確認しておきたい。例えば、自分から参加した人の集団なのか、会社が対象者を決めた集団なのかでも、数値を読む際の着眼点は変わる。比較の条件を言葉にしておけば、追加で何を調べるかも考えやすくなる。

 

受けなくても達成した人を比較の手掛かりにする

こうした問題意識から、舘野社長が独自に考えたのが純効果度だ。計算の出発点は、研修を受けていない人の中にも、目標を達成した人がいるという事実である。その達成率を、受講した人の集団にも当てはめ、研修以外の条件によって生じたと見込む達成分を考える。

受講して目標を達成した人数から、その見込み分を差し引き、目標達成者全体に対する割合を求める。これが、インタビューの説明と送付資料に示された算式の考え方である。チラシの例なら「研修の受講」を「チラシの認知」、「目標達成」を「目玉商品の購入」に置き換えて読める。

重要なのは、研修以外の条件による影響が、二つの集団で同じように働いているだろうという前提を置いている点だ。この計算によって、実際の営業経験年数や案件量が等しくなるわけではない。どの条件がそろい、どこに違いが残るかは、調査内容と現場の事情を確かめる必要がある。

 

同じ表でも問いの置き方を変えてみる

純効果度の特徴を説明する資料には、チラシを見たかどうかと、商品を買ったかどうかを組み合わせた比較表がある。同じ回答データについて、条件と結果の置き方を入れ替えて計算すると、11.74%と8.27%という異なる値が示される。

インタビューの終盤でも舘野社長は、表を意図的に入れ替え、違う値が出たことに触れた。この発見を、その後の分析につながる話題として挙げている。ただし、値の違いだけで、行動の時間的な順番や因果の方向が証明されるわけではない。送付資料でも「因果関係の証明ではない」と位置付けている。

どの項目を条件として置き、何を結果として見ているのか。同じ表を別の問いから読み直すことは、最初の解釈を確かめる機会になる。一つの見方で納得して終える前に、別の背景や経緯も考えられないかを検討したい。

 

数字を施策に結び付ける前に確かめる

舘野社長は、名目効果と純効果度を併せて見ながら、別の要因がないかを検討する読み方も説明した。ただし、二つは計算方法や分母が異なる。その差を、そのまま他の要因の影響量や、取り除けた偏りの大きさとみなすことはできない。名称が似ていても、何を表す数値なのかを確認することが大切だ。

また、純効果度は一般的な統計学の標準指標ではなく、舘野社長が独自に考案した尺度である。受講者と非受講者の違いを、この計算一つですべて取り除けるというものではない。数値を使う場合は、前提、対象、質問、計算の定義を共有し、因果効果を断定しないことが求められる。

分析を依頼する場でも、何%という答えだけを求めるのではなく、その数字をどの判断に使いたいかを共有しておきたい。研修内容を見直すのか、受講対象を考えるのか、追加調査を行うのか。目的が具体的であれば、担当者と経営者が同じ前提から結果を検討しやすくなる。

研修を評価する側にとっても、目標達成の基準をそろえたうえで、受講前の状況や対象者の選び方を確認することには意味がある。数字が高かったから続ける、低かったからやめると決める前に、その差を生んだ条件を問い直す。インタビューは、分かりやすい集計結果を、より具体的な検討へ進めるための視点を示している。