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第1回:複雑な分析を、顧客が使える数字へ
データム舘野真一社長の原点:インタビューを受けて2026.10.20
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分析結果を詳しく説明しても、顧客に意味が伝わらなければ、次の行動にはつながらない。株式会社データムの舘野真一社長が独自の指標を考えるようになった背景には、独立後に受けた率直な反応があった。大学での統計学との出会い、三菱総合研究所での実務、そして現場との対話。その歩みをたどると、分析を意思決定の材料にするために大切にしてきたことが見えてくる。
社会の現象を数字で確かめたい
舘野社長は、一橋大学の社会学部に在籍していた。社会で起こる現象に関心を持つ中、統計学を教える先生の話に引かれたという。集めたデータも、見方や扱い方を変えることで、判断に役立つ情報になる。それまで漠然と捉えていた社会の出来事を、数値による根拠を持って考えられると知った。
統計学のゼミで学んだテーマも、数字の処理そのものより、それを意思決定へどう生かすかということだった。ある現象は、なぜ起きるのか。自分の印象だけで説明するのではなく、データを使って確かめたい。その関心が、卒業後の進路にもつながっていった。
三菱総合研究所で要因を探す仕事に取り組む
学んだことを仕事で生かせる会社を探し、舘野社長は三菱総合研究所に入社した。面接で統計的な発想を使ってデータを扱う面白さを伝えると、アンケートや営業活動のデータからモデルを作る部署への関心を尋ねられた。自分が取り組みたかった仕事と重なり、約8年間にわたって実務を経験したという。
そこで扱ったのは、アンケート、営業活動、意識などのデータだった。現象を説明できそうな要因を考え、それらを組み合わせたモデルが実際の結果にどれだけ当てはまるかを調べる。平均や分散といった基本的な集計を押さえたうえで、複数の要因の関係を捉える分析へ進んだ。
舘野社長が繰り返し語ったのは、要因を見定める難しさである。関係していそうな項目は数多くあっても、判断に役立つ項目が最初から分かるわけではない。何に注目するかを絞り込むことが、モデルを作る前の大切な仕事だった。
ここで目指していたのは、結果の数字を言い当てることだけではなかった。原因として考えられるものを整理し、その組み合わせで現実の動きをどこまで説明できるかを考える。説明が現象と合わなければ、着目した項目や置いた仮説を見直す。その積み重ねが、データを扱う実務の土台になった。
現場の思い込みと顧客の行動を照らし合わせる
インタビューでは、スポーツジムの売上が増えたと仮定して、要因を考える会話が交わされた。健康への関心が高まったのか。近くの競合店の変化が影響したのか。あるいは、ジム内のサウナを目当てに人が来ていたのか。同じ売上増加という結果にも、複数の説明が考えられる。
これは特定企業で実証された成功事例ではなく、分析の必要性を説明するための例だ。もし運営側が考える来店理由と、利用者が実際に重視するものが違っていれば、案内するサービスや訴求する内容もずれてしまう。数字を調べる目的は、現場の考えと顧客の行動を照らし合わせ、施策を選ぶ材料を増やすことにある。
割合の高い項目を見つけたところで終わらず、なぜその結果になったのかを考える。三菱総合研究所で経験した要因探しの視点は、独立後の身近な企業との仕事でも生きることになった。
意味が分からないという反応が出発点になった
会社員時代には、国や地方自治体など、規模の大きな組織を相手に仕事をしていた。一方、独立して自ら顧客を開拓する段階では、民間の身近な企業との仕事から始めた。その中で依頼されたテーマの一つが、折り込みチラシの効果を分かりやすく説明することだった。
当初は、大学や実務で用いてきた多変量解析や重回帰モデルによって説明しようと考えた。しかし、顧客はそれらの手法に慣れておらず、意味が分からないという反応が返ってきた。分析する側が理解していることと、説明を受ける側が理解できることの間に、隔たりがあったのである。
そこで必要になったのが、現場で共有しやすい単純な形だった。チラシを見たか、見ていないか。掲載された目玉商品を買ったか、買っていないか。二つの質問を組み合わせた四つの区分から、検討できる指標はないかと考えた。この試行錯誤が、独自に名付けた「純効果度」へつながった。
説明の入り口が二つの質問なら、顧客も自分の事業に置き換えやすい。誰に何を尋ねたか、答えをどこに分類したかを確認できれば、分析する側だけで話が進むことを避けられる。専門知識を共有していない相手と、同じ表を見ながら話せることにも意味があった。
分析を理解してもらい次の判断につなげる
純効果度は、条件に当てはまる人の結果だけでなく、当てはまらない人にも同じ結果が生じていることに注目する。詳細な計算の前に、何と何を比較し、どんな前提を置いたのかを、顧客と共有できる形にする。その考え方には、説明が伝わらなかった経験が反映されている。
経営者にとっては、分析手法の名称より、今回何を知り、その結果から何を検討できるかが重要になる。舘野社長の歩みが示すのは、分析の専門性を、相手が判断に使える説明へと変える仕事である。大学で知った統計学の面白さと、現場から受けた率直な反応。その両方が、現在のデータムの分析に通じている。