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上手なチャンスの見つけ方、思考法
2021.09.03
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~違いが分かればチャンスが見える、それを容易にする思考法、ツールとは~
1.はじめに ~ チャンスとは、意思決定とは、現状把握とは
チャンスとは
本書のテーマは「チャンスをいかに見つけ出すか」、そのための上手な考え方や意思決定方法、そしてそれを実行する上で便利なツールを紹介することである。
ところで、チャンスを見つけ出す上手な方法とはあるのだろうか?
じつは意外に感じられるかもしれないが、次の3つの質問。
たったこれだけの質問について深く考えることで、チャンス獲得の確率が飛躍的に高まることをご存じだろうか?
- どこに違いがあるか?
- どこから、その違いが生まれるのか?
- その違いを埋めるために何を優先すべきか?
もうお気付きと思うが、上記3つの質問とは、すべて「違い」に関わるものだ。
そう。チャンスとは、「違い」に潜む役立つ情報を浮き彫りにすることで、はじめて見えるものなのだ。筆者はこの3つの質問を「違いが分かる3つの質問」と呼んでいる。
そしてチャンス獲得とは、もう少し一般的な表現をすれば、「目的達成」とも言える。
目的達成のための上手な思考法、それはまさしく意思決定に他ならない。
では意思決定とは?
意思決定とは
日々の生活とは、それがビジネスであれ、プライベートであれ、「次にどうすれば、より良くなれるか、より便利で快適に、そして楽しく生きられるか?」についての、決断と実行、すなわち「意思決定」の連続である。
「意思決定」を合理的かつ効率良く行うことができれば誰も苦労しないのだが、現実問題としては、多くの方が「意思決定」に悩みを抱えているのではないだろうか。(「意思決定」に悩んでいないという方でも、現状肯定の見方しかせず問題の存在に気づいていない場合がある。この場合、事態はもっと深刻と言えよう。)
これまでの筆者のリサーチやコンサルティングの経験に照らし合わせると、「意思決定」を行う局面で、多くの人がつまずいたり壁に突き当たったりする原因として、大きく次の3つが挙げられる。
①目標の不在
~「目標をどこに、どう立てるか」が不明瞭~
②現状把握(=ポジショニング)の不在
~「現在、自分や他者(社)がどのような位置づけにあるか」が不明瞭~
③戦略の不在
~目標と現状の差を埋め合わせる対策を講じる際に、現在の自分の立場を考えて、何が大切かを明示できない~
現状把握とは
では、さらにこの3つの「壁」の中で「最も問題となるものは?」と聞かれたら、あなたは何を選ぶだろうか。
「こうありたい」という希望や願望(=「目標」)があって人は行動するのであり、「目標」とすべき最終地点が定まって、はじめて適切な対処方法が見つかる-したがって①の「目標の不在」が最大の問題だ、という意見が多いのではなかろうか。確かにこうした主張は一理ある。しかしながら、ビジネスの現場に即して考えると、筆者は②が最も重要な問題であると考える。
一個人としてだけでなく、組織として、継続的に適切な判断・対策を実行し続けるには何が重要であろうか。それは、誰もが「なるほど」と納得できるような、客観的で分かりやすく示された論理、あるいは筋道だろう。
もし、「目標」が、多くの人の合意を得られるような客観的な論理の上に示されたものであるならば、それはそれで十分であり、あとは、それを「どう実現していくか」の方策検討段階に進めば良いことだ。しかし、現在の自他の位置づけを正確に把握できないまま、「理想とする姿(=「目標」)」を漠然と思い描いた議論が多いのもまた事実である。残念ながら、こうした議論から導かれる結論は、当人たちにしてみれば大真面目なものであっても、はたから見ると説得力に乏しく、得るところが少ないものである。現在の状況をできるだけ客観的に、言い換えれば「具体的に」数値表現した上で「目標」となる到達点を示さない限り、その「目標」は単なるスローガンで終わってしまうのだ。
人は、自分が本当に大切と感じるものについては、数値で捉えるよう努力し、判断・行動もそれに基づいて行う。これは、「数値化」という行動が、より具体的な状況把握のために必要なステップと考えているからにほかならない。
例えば、企業の財政状態を把握するために財務諸表を作成したり、家庭で収支勘定を行うために家計簿をつけたりするのは、こうした論理に基づくものだ。そうすることが、現実を把握するためにより役に立ち、効率的であると信じているからである。
このような理由から、筆者は「正確な現状把握」こそが最も重要なものであると考える。
すなわち、「意思決定」とは、
「自他の位置づけがどうなっているか」、
「自他の強み・弱みは何か」、
「なぜ、そのような状況になっているのか」、
「そうした状況の中、どのように行動するのが得策か」を、できるだけ数値をもって客観的に表せるよう、冷静に考えることからはじまるのである。
筆者は、こうした一連の思考を『現状把握』と呼んでいる。
そして、この『現状把握』の延長として、例えば「自分(自社)の強みを思い切り伸ばしたらどうなるだろう?」という想いをめぐらせることで、「具体的な目標」が創り出されるのである。
賢明な読者のみなさんは、何を言いたいかもうお分かりであろう。
そう、ここでの「目標」とは単なる夢や理想とは異なり、明確な数値軸上で捉えられる到達点を意味している。
つまり、「目標」とは、そこへ到達するための具体的な手段、投入資源等の判断において、可能な限り数値的な裏付けがあり、筋道が立ったものでなければならない。
本書では、この「目標」到達へ向けて、「何を」「どのように捉え」「どのように対処すべきか」の『技術』を、ビジネス事例をもとに紹介する。この『技術=ものごとを見る際の適切な見方・コツ』をつかむことで、誰でも具体的な「目標」に容易に到達できるものと確信している。
今後のビジネスマンに求められることは何であろうか。
「与えられた問題をソツなく処理する能力」 - これは今後も重要であろう。しかし、それ以上に「問題の有無に気づき、その解決に向けて合理的な対処=意思決定を行える能力」が、今後一層重みを増してくるであろう。
本稿で紹介する意思決定術が、こうした期待を背負っているビジネスマンの方々のお役に立てれば幸いである。